このたびは大賞という身に余る栄誉を賜ったうえ、さらには作品がJR行橋駅という市の玄関口で多くの衆目に接することは表現者として幸甚の至りであり、選考にあたられた先生方には深く感謝申し上げます。
また、ゆくはし国際公募彫刻展実行委員会事務局と関係の皆様には、終始さまざまにご尽力いただき、またご心配をおかけしたことに心より感謝とお詫び申し上げます。
今回の制作にあたっては、私の第二の故郷といっていい富山県高岡市の、金屋町や銅器業関係など多くの方々のお世話になり、多大な協力を得ることができました。伝統的な金属工芸品の産地である高岡市は、鋳造工場を始め様々な金属加工技術の一大集積地であり、私自身大学をでた後、十数年にわたり師の槻間秀人氏のもとで、銅器の原型製作の仕事をとおして多くの事を学ばせてもらいました。今回その高岡で数々の専門的な助言や協力を頂き、新たな知己にも恵まれたばかりか、思わぬめぐり合わせもあって行橋市との新たな交流のきっかけにもなったことは、かけがえのない喜びとなりました。
テーマとなった末松謙澄氏は、文化の発信者として自信と度胸に溢れたバイタリティ豊かな人物であったと思います。肖像の制作では氏のそのような前向きな人物像を造形に表現することを心がけました。
今年の年初から構想を練り始め、3月末の応募締め切りに向けてマケットの制作を進めていましたが、時を同じくして世界では新型コロナという未知の災厄に見舞われていました。突然世の中が膠着し、決まると思っていた仕事や多くのイベントが失われ不安で心が折れそうになりながらも、末松謙澄氏の力強い姿にすがるような気持ちで応募にこぎつけたのを昨日のことのように思い出します。未だに先が見通せない模索の日々ですが、それでもこの行橋から世界へ向かって羽ばたこうとする若者の背中を、ちょっとでも押して勇気づけられるような像になることを心より願っています。